『北陸地方手仕事のおはなし』ご報告 |
京都は、めずらしく一日中雨降りでした。
日曜日の「珈琲屋さんで知的探訪」
10回目となります『北陸地方』編をお送り致しました。
左京区高野にあります「自家焙煎コーヒーカダナ」
「全国車椅子駅伝」の日で、丸太町通交通規制、
日曜日ということもあって、ちょっと車も混んでました。
寒い中お集まり頂きまして、有り難うございます。
早速、温かな「ご当地ランチ」召し上がって頂きましょう。
北陸福井県の定番メニュー「越前そばとソースカツ丼」
おそばは(大根)おろしに鰹節をかけます。カツ丼は卵とじ
しないのが普通。このメニューは喫茶店でも食べられるほど、
福井県ではポピュラーなんだそうです。
そういえば、「ソースカツ丼」で有名な福井県発祥の洋食屋
「ヨーロッパ軒(敦賀店)」で食べたことがあります、私も。
カダナさんお手製の越前おろしそば、お出汁も美味しく、好評でした。
ご飯は「コシヒカリ」新潟県魚沼産が有名になりましたが、元々は
《「越の国に光り輝く米」福井県で育成した品種だったのです。》
カダナさんのお知り合いが、口を大にして伝えて欲しい!という
リクエスト。にお応えしました。
お腹も満足したところ、レジュメに沿って、そして皆さんが
イメージする「北陸アンケート」の統計でおはなしを進めます。
「金沢」「カニ」「眼鏡」「温泉」など・・
北陸地方は自然も文化も食べ物も、本当に豊富です。今回ご紹介
するトピックスを絞りきれずに、これから旅行して頂く“見どころ”
のような気持ちで、あらゆる情報をお持ち帰り頂きました。
各県の観光課から取り寄せたパンフレットだけでも、大層な量に!
これでもほんの一部です。
「富山に来なければ堪能できない、美味しい旬の地魚鮨。
天然の生け簀<富山湾鮨>」なんて60軒ばかりのお鮨店ガイドも。
<ベニズワイガニ・シロエビ・ホタルイカ・寒ブリ〜>
「写真だけ眺めてても、ねぇ〜〜」ごもっともです。
うらやましい。キトキト(富山弁:新鮮)食の宝庫。
以前、氷見に行った時地元人の通う「廻る寿司」へ連れて行って
もらいましたが、まぁなんと美味しかったこと!
北陸地方の方は皆さん、郷土愛・お国自慢心が強いそうです。
カダナさんも昔、親戚の方の元で生活されたことがあるそうで、
北陸にお詳しい。それで様々な食の情報を紹介して頂きました。
「名物ますの寿司、物産展や駅弁のは本物ではありません。
本当に美味しいますの寿司は、午前中に売り切れてしまうので、
地元人も取り寄せします。一度取り寄せしてみてください。
オススメの店の電話番号は〜〜〜」 ハイ、メモのご用意。
定番の味付け味噌「鳥野菜味噌」出汁の入った味味噌。
今ブームの「富山ブラック」醤油ラーメン。
気軽に使える「打豆」大豆を茹でて叩いて、乾燥させたもの。
美味しいカダナコーヒーと一緒に。「けんけら」
大豆に胡麻を混ぜて練った、州浜みたいな駄菓子。
その他いろいろ・・メモもいそがしい。
手仕事のご紹介は、大きな3つの項目に絞りきれなかったものを+α。
「古九谷焼」は豪放華麗・大胆な図柄で海外でも評価の高い焼物。
しかし1655〜1720年のわずかな時期にだけ作られ、突如廃窯
したといわれる。遺された文献も少なく、はっきりと「古九谷焼」
と判断される作品も少ないので、未だ謎の多い焼物。
「古九谷伊万里論争」とよばれる、古九谷の発祥地が、九谷(加賀
前田藩)か有田(肥前鍋島藩)か争われた論争は有名。
1970年代から九谷と有田で窯跡の発掘調査が開始されたことを発端に、
陶片の物証から<伊万里の素地を使い、加賀で古九谷様式の絵付け>
をしたともいわれている。骨董コレクターに人気の焼物。
さすがに古九谷焼の見本は、ご用意できませんでしたので、「九谷の
五彩(赤・黄・緑・紫・紺青)」で描かれた少し古い向付碗を。
それから六古窯の一つ、「越前焼」焼締作品の見どころを。
1583年から金沢を治めた加賀藩前田家は、武士や庶民に能楽や茶道を
奨励したことから、多くの伝統工芸が受け継がれています。
金沢箔・加賀友禅・加賀象嵌・加賀水引細工・大樋焼・金沢仏壇・・
城下町金沢を散策するだけでも、兼六園・成巽閣・金沢21世紀
美術館・・文化・芸術の香りに触れることができます。
さすが加賀百万石。美味しい和菓子もたくさんあります。
北陸地方は、豊富な素材、適度な湿度に恵まれ漆工芸が有名。
左の「角偉三郎作 だるま椀」輪島塗は、1400年頃紀州(和歌山)
根来塗の職人が技法を伝えたといわれる最古の漆技術を基に発展。
右の「朱塗椀」は金沢市内の漆器店にて、古いお椀を研ぎ直し、
塗り直したアンティーク。
手前「若狭塗 箸」若狭塗(福井県小浜市)は、全国シェア80%
生産量日本一の塗箸地場産業を誇ります。
若狭塗には、汁椀などの庶民的な生活道具がありません。
質素倹約を美徳とする徳川時代に、螺鈿細工など施した華麗な
若狭塗は、一部の公家大名、豪商のものと限られていたから
だそうです。
今回、北陸のことを調べていて「北前船」にたいへん興味を
持ちました。日本海側が<表日本>と呼ばれていた豊かな時代。
それは江戸前期から明治始めのこと。
「動く総合商社」とも言われるように、商売のためのあらゆる荷物を
積み、各地の港に寄りながら大阪から蝦夷(北海道)まで往復した
西廻りの交易船を「北前船」と呼びました。富山では寄港する度
倍々儲かる「バイ船」東北では白い巨大な帆布一枚の弁財船「ベザイ」
「ベンザイ」と呼んだようです。
京・大坂の料理人が、昆布で出汁をひく日本料理が広まったのも
北前船の流通があったからこそ。
能登を中心とした北前船が、蝦夷を目指す下り船は米。上り船はニシン。
鰊は当時、重要な肥料でした。そして昆布。富山県は現在も昆布消費量
全国1位。交易ルートは“昆布ロード”ともよばれます。
その他、瀬戸内の塩・山陰の鉄・船のバラスト(重し)代わりに積まれた
笏谷石(福井県産、・水に濡れると青みを帯びる石=東北や北海道に使わ
れた寺社が遺っています。)酒・富山の薬・漆工芸など日用品・はたまた
本山永平寺の曹洞宗においては、全国に布教活動を促します。
関西から関東へ下る「樽回船・菱垣回船」の経営システムとの違いは、
「運賃積」ではなく「買積」をとったこと。
品物を運んで運賃を利益とするのではなく、船主が各地で安く買入れた
商品を高く売れるところへ運んで、売り払って利を得たこと。
地域による価格差を利用した方法で、成功した場合は莫大な利益を
得ますが、船自品物も全て船主の所有なので、一度海難にあえば損害も
莫大なものになるのです。「鰊御殿」を建てた豪商も輩出しましたが、
損益は背中合わせ。海上信仰ともいえる航海安全祈願の神社が、各寄港地
に造られます。
若狭の気比神社、四国の金比羅宮などに、奉納された船絵馬が残っています。
能登半島の北前船の興味深いサイトを見つけました。歴史紀行ジャーナリスト
水越要氏のルポです。ご興味お持ちでしたらご覧ください。
「のとねっと北前船ものがたり」
北前船による美味しい郷土食召し上がって頂きましょう。
薫り高い日本酒は「勝駒」富山県一小さな酒蔵、高岡市にある
明治39年創業の清都酒造場。高岡市は万葉集に縁ある街。
高岡大仏も有名。オススメしてもらったのは、お世話になってます
「タキモト名酒館」新谷さんです。
アテは能登の「鰊のへしこ」この塩辛さは、お酒に合う珍味ですね。
おはなしの続きは「越前竹人形(福井県)」鉈で割った0.2mmの
髪の毛の繊細さ。昭和61年芦原温泉の近くに作られた「越前竹人形の里」
年間50万人もの観光客が訪れます。何故か、サスペンスドラマの舞台に
なりやすい東尋坊とのセット。1月にも放映されましたね。
双子姉妹の絆の証が竹人形。それが事件の鍵を握る・・・!
そして鯖江市(福井県)の眼鏡産業。(鯖江の鯖は、青ではなく下は円が
正解です。変換できずすいません。)
国内フレームシェア96%、世界シェア20%、中国・イタリアと並ぶ産地。
(日本の一つの都市がですよ。)鯖江市の6人に一人は眼鏡産業に従事
されてます。チタンフレームの発案が成功しました。
「めがねミュージアム」では、オリジナルのメガネ手作り体験ができる
そうです。おもしろそうですね。
写真は「鼻眼鏡」摘んだバネで鼻に固定する初期の眼鏡。耳に掛ける今の
形になるまで、ずいぶん苦労がありました。
北陸三県の富山県も忘れてはいけません。
「五箇山合掌造り集落」雪深い地域ならではの生活の知恵があります。
和紙工芸で盛んな八尾の和紙のクッション。とっても丈夫なのですよ。
八尾の近く「おわら風の盆」情緒ある伝統行事も有名ですね。
「こきりこ祭」もご存じでしょうか、五箇山に伝承する最古の民謡。
木の板を編み込んだ「ささら」を打ち鳴らして踊るお祭り。
「こきりこの竹は七寸五分じゃ〜長いは袖のかなかいじゃ(邪魔)〜
窓のさんさも(寒さ)もデデレコデン・・・♪」
ささらを使ってちょっと唄わせて頂きましたが、真面目に聞かれたら
困ります。そこは笑わないと・・! 恥ずかしくなって
皆さんに「ささら」をふってしまいました。なかなか難しいでしょう。
盛りだくさんの「北陸編」いかがでしたでしょうか?
只今、JRのお得な周遊切符もでています。雪の似合う北陸へお出掛け
になってみてください。近い将来、北陸新幹線も開通しますよ。
この度も有り難うございました。
次回は「東海道地方手仕事のおはなし」初夏にお届け予定です。
<おまけのおはなし>
「北陸」の意識が、頭の片隅にあるせいでしょうか。
京都の寒空の下、目の端で追ってしまう風景。
縄手通 骨董屋さんウィンドーで「古九谷(写し?)皿」
大和大路通 眼鏡屋さん看板「メガネは鯖江産」鯖絵付き。
長らくのブログ、ご覧頂き有り難うございました。
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