重陽の節句 令和3年

9月9日は重陽の節句、最大値の陽数が重なるおめでたい節句。

五節句のうち、桃の節句、端午の節句に比べると、後になるほどだんだんとだれてきて(？)意識も薄れがちですが、京では重陽の節句の宮中の行事に因んだお菓子「着せ綿」を拵える店舗が幾つかあります。かの「紫式部日記」にも記されている、実に古式ゆかしきお菓子なのです。

祇園かぎ甚さん製はお手間入りで、こなし生地のなかに漉し餡と栗餡を二重に包んだ口溶け滑らかな仕上がりになっています。お菓子の成りは、菊の花の上に覆う真綿のイメージです。節句前日から菊の花の上に真綿を被せ、朝露で湿った菊の香りのする真綿で身体を清めることで、不老長寿を願う重陽の節句の行事がありました。(新暦では、朝露を集めるのはむつかしい様ですが)

かぎ甚HP

なかなか季節感を感じにくい世情ですが、日々身の回りの幸せでハレとケの切り替えを作っていきたいですね。

去年は中止になりましたが、祇園の秋の恒例行事「温習会」が開かれます。2年の年月をかけて、井上八千代先生ご指導の下、芸舞妓さんが練習を重ねてこられた集大成の舞台となります。一説では、都踊りよりも目が厳しいとか。雪洞も設置されて、花見小路が華やかになってきました。

週末を迎えて、おぉ！明らかに人出が違う！四条から賑やかに見えるのでしょうね。踊りが終わってもスポンサーの名前を貼っつけて、雪洞だけ残しておけばいいのに。

着物の似合う街、THE 祇園！

岡崎にある京都観世会館では、ツキイチ「KYOTO de puteli能」という公演を開いています。夜の公演会ですので、お勤め帰りのお客さんも多くいらっしゃるようでした。むつかしそうに感じる能の世界をもっと身近な演劇として、いや、エンターテイメントとして知って頂こうと、若手の能楽師、狂言師の皆さんが頑張っておられます。一回90分、わかりやすい解説とレジュメ付き、人気のある四番物の一曲を選んで、ダイジェスト版で演じられます。

今月は「菊慈童」でした。時間の制限がありますので、始めから作り物の菊の籬(まがき)と、枕が備えられていました。菊慈童は中国の政治、歴史物という感じもしますが、不老長寿を寿ぐ「祝言性」を感じてみましょう。という解説でした。祝いの舞、お酒を勧める扇を用いた踊りの所作など、「はーい、そこでストップ！」youtubeを回しているように丁寧に説明してくれます。若手の演者さんたち、なかなかお茶目です。昔の厳かな緊張張り詰めた能の世界に比べたら変わりましたねーーー。退場される演者への拍手のタイミングだけでも、今か？長すぎか？余韻を殺さぬように意識したものです。良いとこ取りのダイジェスト版、確かに前後の仕舞や五番立ての流れの余韻などを感じ難いことではありますが、時代に合わせて柔軟に対応していかないと存続できないのでしょう。

謡曲はずいぶんショートカット、出血大サービス、次は茂山流の狂言です。

珍しい演目「菌(くさびら)」くさびらとはきのこのこと。あまたきのこが舞台を所狭しと飛び回るので、うさぎ跳びの様な姿勢も大変、あまた演者も集めないといけないということで、あんまり観せてくれません。笑

久しぶりに笑わせて頂きました。懐かしい中国のキョンシー映画みたいに、最後は一列になってホイッ、ホイッと退場されます。茂山家跡取りの子役の可愛い子たちが出演する舞台、観ている同級生？親戚の子たちも学芸会を見ているように大興奮！ロックライブみたいに一緒に飛んでました。お母さん横でハラハラ。笑

コロナ禍のうちの何だか微笑ましい光景でした。

そういえば、菌=くさびら=ウイルスとかけて、此の演目を選ばれたかもしれないですね。役行者に呪いをかけられても、散らかるばかりでくさびらはやっつけられませんでした。今も昔も変わらぬ戦い。。。

コロナ禍もこんな風にコミカルに演じられるような時代が来ればよいですが。

次回は10月29日(金)19時〜20時半「邯鄲」です。女主人に起こされて現実に戻る、シテ盧生を務める味方團氏の邯鄲の夢を誘う上手なMCに釣られて席を抑えてしまいました。

ご興味お持ちの方は林能楽会HPまで。

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