2021年 09月 09日
京都国立博物館『京の国宝展』 |
あまたの国宝と川の字になって寝ているような、そんな贅沢な場所に住んでいながら、京都国立博物館の特別展『京の国宝展』をやっと観覧できました。7月24日から始まった展示期間中、前期・後期の入れ替えを観るはずが、気がつけば重陽の節句。長い梅雨だったのが、すっかり秋雨の候です。
全国の1万件を超える国指定の美術工芸品のうちの約6分の1が、京都にあるそうです。さすが天災の被害に免れてきた京都盆地、御所おわす京(みやこ)。今回の展覧会では、京都ゆかりの一級品の国宝、皇室所有の名宝揃い、加えて、文化財を後世に守り伝える意義と保護、修理の取り組みについて紹介しています。
館内、第一室は文化財保護法が制定された昭和25年(1950)に因んだ文書や写真を拝見。続いて、昭和26年6月9日、記念すべき最初の国宝に指定された様々が並びます。「御堂関白記」平安時代 藤原道長の書いた日記は、世界最古の自筆日記としても大変貴重です。「瓢鮎図」如拙画 禅問答の代表作、「宝相華迦陵頻伽蒔絵そく(土偏に塞)冊子箱」仁和寺所蔵の平安時代の美しい漆芸など、、、、
さすが国宝、何れも美しい保存状態、平安時代や鎌倉時代に作られたとは信じがたい。海外に流出されることなく、日本で調査研究されながら伝え遺されたことに感謝ですね。
なかには里帰りの美術工芸品も少なくなく、仏教の儀式のときに撒かれる華(散華)を入れるための金色の透かし籠などは、平安時代の最も良い状態のものがホノルル美術館収蔵品です。国内にあるより、むしろ戦火を免れ、大事に保存されてきたと思われる作品もたくさんあります。
「金銀鍍宝相華唐草文透彫華籠」南北朝時代
南北朝時代と平安時代の華籠が合わせて18枚並んでいる展示は圧巻、繊細で素晴らしい。
「雲中供養菩薩像」平安時代
宇治の平等院鳳凰堂の菩薩像の一体。踊る片足の指の上げ方がなんとも艶っぽい。
「十二天像のうち水天」平安時代 京都国立博物館蔵
東寺にあった画像で、御七日御修法の際に飾られたスケールの大きな密教の歴史を伝える作品。
平安時代には王朝美の優雅な雰囲気が漂う特徴があり、鎌倉時代には写実的な表現に切磋琢磨した様子があり、各時代の文化の流れ、其れは絵巻物や写経に書かれた文字の特徴からも現れています。
「玉泉帖」小野道風筆 平安時代 も、三書体を自由自在に操る真似できない見事な御手でした。
美術工芸品に表現された美の時代背景を紐解くには、出来るだけ多くのパズルの欠片が必要です。比較研究するためにはできる限り国内にあることが望ましい。そういう意味では、皇室は大きな庇護者です。
自分の代では修復解明できかねる難題を抱えた美術工芸品に、人生をかけて挑む研究員の方もいらっしゃるでしょう。一歩間違えば破損しかねない仕事、日々1cm四方の修復しか進まないことも珍しくなく、完成するまで何年要するかわからない、途方もない仕事です。
また、後半の展示室で紹介されていましたが、修復に必要な良質の素材、例えば和紙や木材などが、原料の減少化、後継者不足などで手に入らない状態になっています。元来作られた風土に基づいた材料で修復することが、違和感なく適応して最も良いとされています。が、こうしたサイクルも困難になってきているのが現状です。
予定通り展覧会を開催することもまゝならぬコロナ禍において、美術館、博物館の存続維持すら大変厳しいと思います。海外に頼らず 、国内の充実した独自の展覧会内容でなんとか乗り越えて頂きたい。
また、アッと驚く新しい価値観を発信してもらいたいです。
描かれた精密な画面から風を感じる個性派の画家、岩佐又兵衛。「小栗判官絵巻(15巻のうち2巻)」が出展されていましたが、いつの日か大回顧展を開いて欲しいですねー。実現できるのは京都国立博物館しかないと思って心待ちにしています。
若冲、蕭白、暁斎、等伯、海北友松ときたら、次は又兵衛でしょう!
<絵巻物写真 MOA美術館蔵>
by mottainai-amata
| 2021-09-09 14:30
| 観てみよう展覧会
|
Comments(0)