2020年 12月 23日
小春日和の大和路 |
師走の二週目、穏やかな小春日和の一日、奈良は天理〜三輪の方へ
大和路散策しました。ちょっと早いですが、今年の無事を感謝しつゝ、
罪や穢れを祓う大祓行脚でもあります。
人間が近寄っても全く動じません。慣れたもので、美しい尾っぽを振って
自由気まゝのモンローウォーク。天の岩戸を開かせた、夜明けを告げる
コケコッコー、此処では神さまのお遣いとして大事にされています。
主に開運と起死回生を導く神さまは、刀剣がご神体。伊勢や出雲、熊野となどと
並ぶ日本最古の神社のひとつ。
拝殿は国宝、参道からのアプローチを歩くと、見上げる鐘楼も美しいデザイン。
古い形の蟇股も見所。境内お祀りされる幾つかの摂社には、出雲の神さまも
おられます。ご神体の刀剣からタタラ製法起源の土地である出雲の国との
繋がりが浮かびます。
元は禁足地だったそうです。発掘により多数の宝物が出土しました。
そのなかに、「七支刀」とよばれる特異な刀がありました。ご祭神として祀られ
てきたのでしょうか。池の傍の刀剣型の石塔に刻まれた「布留(ふる)の社」とは、
石上神宮の南東にあるなだらかな布留山からつけられた古代の呼び名。
至るところに古墳群が見つかる古代ロマンの世界。
「石上 布留の神杉 神びにし 我や さらさら 恋にあひにける (万葉集 詠み人知ず)」
周りを見渡せば、すっくと立つ杉の大木がそびえ、木漏れ日に紛れながら、
ふわりふわりと精霊が宿っていそうな景色です。
結構段差はありますが、ハイキングコースになっていて安全な道です。
万葉集ファンがマップ片手に歌碑を見つけながら歩く、一年通して人気のコース。
JR万葉まほろば線とほぼ平行していますから、疲れたら電車に乗ればよろし。
気も楽ちん。
この日はもう一つ別の目的がありましたので、山辺の道はショートカット。
行く先は天理の町のシンボルマーク、日本らしからぬ景色。存在感増す
威風堂々、まるで要塞のような中華風の建築物。天理大学に隣接した建物
「天理参考館」を目指します。
あまねく世界の人々の文化や風習を知らなければならない。と、創立1930年
から始まり、あらゆる文物約30万もの研究資料を収集した博物館です。
建物3階までびっちりと展示されていますよ。全て収蔵品で成り立っているのが
素晴らしい。年に何度か企画特別展があって、今回は「大航海時代へ」として、
マルコ・ポーロやバスコ・ダ・ガマの時代からの憧れであった大旅行の資料が
並んでいました。活版印刷の歴史的資料でもあります。
特別展は撮影禁止でしたが、東方見聞録やメルカトール地図などの貴重な資料が
集められていました。実際残っているのがすごい、紙媒体も大事に守られてさえ
すれば、断然ITより強い。
(現在此の展示会は終了しています)
素朴な土人形、南米産だったでしょうか。犬の顔は明らかに人間の顔でした。笑
中国の町で使われていたあらゆる看板大集合。吊り下がるものからイメージした
商店とは実際全然違った予想外のものもあり。いづれ果て朽ちて行くものとはいえ、
拘りが面白い。左の編組品のしゃもじは木賃宿でした。
慶事や訓示、中国は吊る文化、日本は貼る文化かなぁ?
磁器になり得ない段階の堅手の祭器、足の高いうつわもさまざま。
会場はほとんど天理教の方でしたが、わざわざ行く価値ありの参考館。
そして、天理教本殿。とてつもなく広い敷地に使われている最高級の銘木の建築。
此だけの節のない大木を何処から?何年かけて調達されたのでしょう。圧巻です。
醸造の神さまとして、全国の酒造関係者から信仰の篤い神社です。ちょうど
新酒の仕込み時期を迎えて、醸造の安全を祈願する祈願祭が行われて程なし。
拝殿と祈祷殿には吊り下がる真新しい大きな杉玉! 径1.5m、200kgあるとか。
大神神社のご神体は三輪山です。大物主大神が鎮まる山に向かって、本来
拝殿は設けず、三ツ鳥居を通じて山を信仰する原始的な参拝をします。
(現在コロナ禍で三ツ鳥居の前での参拝はできません)
見えます。天香具山、耳成山、畝傍山。緩やかでのんびりとした景色は、かつて
見下ろす平野に大和の国があり、古人もおんなじ景色を眺めていたのかと思うと、
京の都とはまた違った歴史を感じ入ります。たかだか千二百年やん、とは、
京都嫌いの例の先生。発掘しても大名屋敷跡で満足してしまいます。
「うま酒三輪の山青丹よし奈良の山の山のまに い隠るまでの道のくまい
さかるまでにつばらにも見つつ行かむをしばしばも見さけむ山を心なく
雲の隠さふべしや
反歌 三輪山をしかもかくすか雲だにも 心あらなむかくさふべしや
(万葉集 額田王)」
名歌に思い馳せ、腰掛けてほっこりムシやしないの市田柿。甘くて美味し。
佐井神社という摂社は、病気平癒、健康身体の神さまです。此処では薬井戸から
湧く美味しいご神水が頂けます。多くの人がボトルを持って汲みに来ています。
山辺の道をつらつら行くと、三輪山中から流れ出た小川 佐井川に出会います。
この川のほとりに山百合の群生地があったらしく、その山百合の古名を「さい」
といったことから佐井河(川)になったと、大神神社の季刊誌に書かれていました。
今も境内に山百合園があり、地元の酒蔵では山百合から採取した酵母を使った
お酒を造っています。「奈良県三輪のうま酒、三諸杉醸造元 今西酒造」は、
創業万治三年の350年余り続く蔵。「特別純米酒 山乃かみ」は、笹百合から
採取した「山乃かみ酵母」のお酒です。良水と酵母、やっぱり醸造の神さま。
此方も大神神社の摂社にあたり、三輪山中の磐座をご神体としているので、
本殿はなく三つ鳥居だけが並んだ静かな神社ですが、古人の歌には多く登場
します。西へ向かえばお伊勢さん、歩けば長い道のりですが、当時はダウジング
のように当てを探して、伊勢神宮にふさわしい土地を求めていたのでしょう。
近畿圏には丹波の山奥までも元伊勢の伝説を伝える神社がたくさんあります。
さてさて、参拝を終えて桧原神社から大神神社へ引き返そうと山辺の道を歩く
すがら、肩に掛けたエコバックがどうも軽くなったらしい??袋のなかには、
天理商店街の「黒松稲天」蔵元で購入した搾りたてのにごり酒四合瓶、
他より安い福助の足袋2足、「地元天理の小豆は今日しか出ません!」
おばちゃんの言葉に乗って買ってしまった二合の小豆の袋が一袋。
なんとなく袋から良い香り、マサカ!底からにごり酒が滴っている状態!
中を覗くとバラバラのガラスの欠片になった四合瓶。。。。。
確かに、お賽銭を探すときに、長い持ち手だったので地面にかすった気はします。
でも当たった感触で、割れたかどうかは長年割れ物を扱ってきただけに音で把握
できますし。いや、瓶も梱包してもらいましたし。。。。
「お煎餅がこめんじゃになってしまって悪いね」「こめんじゃって何ですか?」
但馬地方の方言で、粉々になったってことらしい。一瞬、タイムスリップ、
何十年前の場面、今は亡き人を思い出しました。
「振り酒見れば春日なる 三輪山に暮れし夕陽かも」笑。こめんじゃの瓶によって、
辿ったみちに一滴残らず三輪山にお神酒を振り撒いてきたというわけで、
私はよほどお酒の神さんとご縁があるようです。店頭でしか買えないのに。泣。
つらつら椿、長々とお付き合い頂き有難うございました。
今回一番お伝えしたかったのは、鳥をテーマに木工作品を制作なさっている
木工作家の川上嘉彦さんが、三冊目の新刊をめでたく出されました。
代々受け継がれてきた奥吉野の地主さんのインタビューなど、美しい写真と
ともにわかりやすい文章で綴っておられます。
額田王や中大兄皇子、司馬遼太郎氏らと交流して書かれた様、時空を自由に
行き来されたかのような川上さんのエッセイ。
初版の全国の「原風景を歩く」と、二巻目の「近江のみち」も販売しております。
一冊¥1800(税別) ご遠方へもレターパックでお送りできます。
お問い合わせは、MOTTAINAIクラフトあまたまで。
でんわ 075-531-5877
メール mottainai_amata@ybb.ne.jp
by mottainai-amata
| 2020-12-23 22:32
| OFFのあの時あの時間
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