『超絶技巧を超えて 吉村芳生展』

夜の徘徊アート、昨日は京都伊勢丹にある美術館「えき」KYOTOです。

大好きな藤の花、此のダイナミックなパンフレットを手にして、さらに

色鉛筆で描いてあると知って興味津々。実物を見たくなって行ってきました。

『超絶技巧を超えて 吉村芳生展』6月2日まで 会期中無休

美術館「えき」HP

作者の吉村芳生氏は、1950年山口県生まれ、デザイナーを経て画家になった

若き時代は、ほとんど無名でしたが、2007年の「六本木クロッシング2007」

(森美術館)に出品された「ドローイング新聞」作品が話題となって、57歳にして

現代美術家として脚光を浴びました。が、残念ながら、2013年63歳で病に倒れ

逝去しました。

全然知らなかったのですが、生涯で2000点を超える自画像を書いた世界一の人

らしいです。会場には、一年間毎日書き続けた365枚の自画像の一部が出展されて

いました。毎日の新聞の上に、自身のポートレートを拡大して鉛筆で書いてある

のですが、此の新聞も一字一字書き写したオリジナルフェイクなのです。

初期の作品はモノトーンの版画やドローイングばかりでしたが、後期は色鮮やかな

花の世界に没頭します。

広島県から故郷山口県に戻ったときに見たコスモス畑に魅了されて描き上げた

色鉛筆作品が、スランプからの脱出の機会でした。

長さ10mもある作品もすべて色鉛筆です。

パンフレットの藤の作品「無数の輝く生命に捧ぐ」は、約2mx7mです。

緻密でリアルな描き込みには驚きです。その色鉛筆の塗り込み加減がまた凄い。

吉村芳生氏の作品に近づいてよく見ると、薄い鉛筆の方眼紙のようなマス目が

入れてあり、そのマス目を塗りつぶすように描いてあるのがわかります。

写真に基づくサイズから拡大したアタリとなる丸が打ってあるだけで、下書きは

一切してありません。伊藤若冲の有名な象の屏風は、マス目のなかに点描画の

ように色挿しして、ミクロからマクロに絵を浮かび上がらせている効果を狙って

いますが、此方はまたジグソーパズルの様。

ただ上手い下手とか、超絶技巧の技の冴えとかとは違う、描かなくてはならない

何かに取り憑かれたような、、、作家の生き様を表す回顧展でした。

モチーフの自画像や花は、真摯に立ち向かう作家自身の死生感なのかな、と思うと

「瞬時」を描きとめたい凄味が見えてきました。

この迫力、デジタルでは表現できそうにありません。

2018年の東京ステーションギャラリーのことを書いた美術手帖の記事に

作品の紹介がありました。ご参考までに。

美術手帖ウェブマガジン

↑クリックして頂くとブログランキングにカウントされます。応援して頂けると嬉しいです。