お買い物のちょっとした時間に気分転換ができる、ちょうど良い規模の展覧会。
ギラギラした夏の陽射しを木版画の色彩感覚が、はんなりと和らげてくれました。
「川瀬巴水 備後 阿伏兎観音」
「新版画」という木版画はについて……日本では江戸時代に浮世絵が誕生
したことで大量印刷が可能となり、庶民の間でも絵画が楽しまれるように
なりました。盛り上がりを見せた浮世絵は時代と共に収束に向かいましたが、
それらの技術は次の時代へと受け継がれ、大正から昭和初期にかけて新版画
として発展しました。版元渡邊庄三郎が中心となり浮世絵の再興をすると
ともに、新たな芸術を創造していきました。……
案内に書かれていましたが、葛飾北斎や歌川広重らによって大成された日本の
風景画の木版画を、あえてまたモチーフとして選び発表する川瀬巴水や吉田博、
伊東深水一門ら作家の作品約100点が並びます。
新版画の作品は、江戸時代までの、版元が主になって量産する大衆的民俗画、
ポスター、ブロマイドのような人気取りの木版画と少し異なり、
分業制作とはいえど、作家が絵の色彩やモチーフ、完成度まで指示することが
できる芸術品を目指したものでした。
四季折々、日本各地の風景画は、作家の心象のフィルターを通した写実的な風景。
おんなじ場所を表現していても、全然違うように見えるのですね。
先日、京都国立近代美術館「生誕150年 横山大観展」、祇園の「何必館 京都現代
美術館」にて、「現代風景画の指標 麻田鷲司展」を拝見しましたが、
これまで数多の絵描きに、嫌というほど描かれてきた定番の風景を、またあえて
選び、自分の作品として表現したい。と思うのは何故だろう。。。
と思ったものです。
西洋画の筆跡に似せたり、銀箔を下地に伏せ、所々削り残したり、木版画に水彩
を用いたり、墨のぼかしで遠近感を出す。。さまざま工夫された新しい独自の技法、
それも大事ですが、作家が対峙した風景や自然の畏敬の念、叙情性が作品から
感じられるところに、作家らしさが視える。風景画が作家の心象風景と重なりあう。
其れこそ美術の素晴らしさを感じます。
<歌川広重「日本橋通一丁目略図」「浅草田圃西の町詣」>
かといっても、江戸時代の洒脱でユーモラスな浮世絵の表現も素晴らしい。
画面に秘められた紋様の使い方、あり得ない構図、自由奔放で楽しい。
新版画の作品を、スティーブジョブズや故ダイアナ妃が愛蔵されているそうですが、
どの辺りの日本文化を感じ入って購入して頂いたのでしょうね〜〜
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