熊野初詣 2015 続き

次の朝は早々にホテルを立ち、新宮市駅からバスに乗ります。

京都の7:00に比べて、暖かいですね。昨晩の吹雪がウソのよう。

「元旦もかなり降りましたが、和歌山は滅多に積もりませんよ。」

夕べの食事処での大将のお話。

美味しい鮪ユッケと、甘辛鰤大根を地酒「太平洋」でほっこり温まり、

初詣事情など聞いていました。今年は観光客も少ないようです。

しかしこの「熊五郎」さんにたどり着く観光客は少ないだろうなぁ。

本宮大社、温泉(川湯・渡瀬・湯の峰)温泉方面行きののバスに乗ると、

聳え立つ杉の樹の山々と翠色の熊野川。

権現山の裏側をぐねぐねと走ること約1時間。

いい雰囲気の温泉場をいくつも通過します。

途中下車して温泉に浸かりたい気持ちをグッと抑えて、次回は温泉地からの

出発にするぞ！と誓いつつ。。また来ます！

極端に少ない本数、高速を使わない日本一長い走行距離バス

<6時間30分 166.9km>といわれる和歌山新宮駅〜奈良県近鉄八木駅までを

往路に利用しました。

奈良交通HP

世界遺産の巡礼道は、思った以上に作られた道でした。(というより道の駅？)

消防署、警察署はもちろん、銀行、コンビニ、郵便局、お土産屋さん、

レストラン、コーナンセンター…一つの町が形成されています。

このメインになる新しい建築は、紀伊山地の杉を使用した二棟に渡る

「和歌山県世界遺産センター」

映像やパネルで熊野道の歴史や情報を発信する立派な建物。年中無休。

さて、本宮大社に向かいます。今日も良いお天気です。
ご利益を頂くには、そうやすやすと目的地にたどり着けません。約158段だって。

登り口に参拝の順路が示してあります。祀られている神様のそれぞれの

名前と順番が決まっています。

「私は誰々という者です。聖域に踏み入れ、参拝致します。」

ちゃんとご挨拶を通して、参拝させて頂くというアプローチの儀式なのです。

なんと！懐の広い本宮さんでは、ペットも家族の一員であるということで、

一緒に参拝してもよいそうです。この階段を抱えて上がる飼い主もまた

苦行ですね。神倉さんよりは楽チンか。。

人の大きさから、大きな注連縄と絵馬だということがお分かりでしょうか。

三が日は、拝殿前で暮れの献酒にて作られた甘酒のご接待がありました。

全国に約3000社あるという熊野神社の総本山、さすが立派です。

流れるような拝殿の桧皮葺屋根の傾斜や千木の豪華さ、厳かな雰囲気が素晴らしい。

ちょうど屋根の修復工事後の、素屋が外された後というタイミングのよい時に

参拝しました。

青い空の下、背景にある杉木立から清々しい空気が流れております。

拝殿に祀られたそれぞれの神様に、本地垂迹説に基づく阿弥陀如来、十一面観音、

薬師如来…本地仏が祀られて熊野十二所権現となります。

末法思想が広まった時代、個人の救済願望を神に求め、神仏習合の思想に

仏像という形を重ねて信仰しました。

<熊野本宮大社の主祭神の家都御子神（けつみこのかみ）または家都美御子神（けつみこのかみ）は阿弥陀如来、新宮の熊野速玉大社の熊野速玉男神（くまのはやたまおのかみ）または速玉神（はやたまのかみ）は薬師如来、熊野那智大社の熊野牟須美神（くまのむすみのかみ）または夫須美神（ふすみのかみ）は千手観音とされる。>

Wikipediaより

熊野本宮大社HP

行きは右側、帰り道の参道は、向かって左側を歩いて降ります。

真ん中は神様の道だそうです。一休さんみたいですね。

帰り道中、紅白段幕の中に割烹着姿の奥様方がお揃いです。

「寒いですし、お粥召し上がって行かれませんかー？」

有難く頂戴します。暮れのお供えのお米で炊かれたホカホカのお粥。

自家製の梅干しの酸っぱさと香りが、空きっ腹にしみじみ渡ります。

「5日まで毎日ご用意されるのですか？寒い中立ち仕事で大変ですね。」

遠くから詣ったものには、手作りの甘酒やお粥などは本当に有難いお心です。

決して華美でなく、素朴なおもてなしが嬉しいですね。

高さ34m日本一の大鳥居は、平成12年に建てられました。

下山して次の順路は摂社「産田神神」と、日本一の大鳥居が立つ

「大斎原(おおゆのはら)」

大斎原は、熊野川と音無川、岩田川の合流点の中州にあり、

明治22年まで熊野本宮大社が鎮座し、約1万1千坪の境内に5棟十二社の社殿、

楼門や能舞台なども建ち並んでいたそうです。

明治22年の大水害で流され、その後救われた上社を遷宮したのが、

現在の熊野本宮。

大斎原の中は、杉で囲まれた平原の中に石造りの祠が佇むのみ。

祠の前に立っていると、ポッカリ空いた青い空の屋根を白い雲が流れていく、

取り遺された島のようです。

ここが熊野道の終点地といわれます。昔は音無川に橋がなく、

参拝者は川の中を歩いて渡り、身を清めてからお詣りしたそうです。

大昔イチイの大木に三つの月が降りてきて、それがそれぞれ神の化身で

あったことから、熊野信仰が始まったという語りがります。

三つの月とは三つの川と関連があるのでしょうか。

鬱蒼とした険しい山並みの中に現れる、丸いなだらかな山々を背景にした中洲。

日と月と水と緑に囲まれたこの土地が、自然崇拝の聖地となったのでしょうか。

今の川の流れでは、禊ぎになりませんね。悠久の歴史、変わらない風景はあり得ないのですが、

人の一生というスパンで考えたときに、変わっていないだろう風景は

あり得るのではなかろうか。。
大斎原を眺めながら、土手に腰掛けて昼ごはん。

熊五郎さんで分けてもらった紀州名物「さんま姿寿司」

絞った柚子が、初夏を思わせるほどの暖かい風に爽やかに香ります。

本宮の前で、再生ガラス工房を構えている作家がおられるときいてました。

が、こんな近くとは思いませんでした。ちょっとお邪魔しました。

さてさて、奈良交通バスの長旅が始まります。大和八木に行くバスは

11:20発のみです。

源泉掛け流し「十津川温泉郷」で休憩タイム。

恨めしそうに手浴で、ちゃぷちゃぷ。

サラッとしたお湯に少し硫黄の香り。しぶしぶバスに戻ります。

三重と奈良の県境を走っています。だんだん険しい山に分け入るルートは、

お正月の雪も固まったまゝです。

この長い道のりの間に、何度か休憩時間があります。

やっと奈良県五條市まで来ると、下界に降りた気がしました。

バスセンターの隣にイオンモールがあります。今のうち！

ファストフード店のコーヒーを買いに行ったり。

運転手さんは、乗客の正確なカウントをしているわけでもなく、

いわば乗り逃げの危険回避策は、信用性のみです。

「三が日まで橿原神宮の参拝客の混雑避けるため、大和高田市駅までしか行きません！」
ということで、熊野道長距離バスツアーは、予想外の展開。聞いたことも降りたこともない駅に着きました。時間は16:00過ぎ。あたりも薄暗くネオン街が現れます。京に向かう大阪の環状線を乗り降りする時、まだ自分は街にいる気がしませんでした。
この二日間で、一年の四季の自然を巡り、山あり谷あり。過去と現代の風景を見て、歩いた感じすらしました。新年早々において一年を過ごしてしまった、なんて。不思議な感覚です。


近頃は<パワースポット><プチ熊野古道>などといって、お気軽な流行で誘う熊野参詣となっているようですが、自然の怖さを忘れてはなりませんね。熊野本宮HP

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